世界選手権でついにベールを脱いだ新型TARMAC「TARMAC SL8」、その全貌と実際に乗ってみたインプレッションをお届けします。
世界選手権のみならず、ツールドフランス、ジロデイタリア、ブエルタアエスパーニャこれら三つのレースを総じてグランツールと呼ぶが、このグランツールでも数多くの勝利を産んできたTARMAC SL7。前述した通り、世界で一番速いロードバイクがどのように進化したのか。スペシャライズドが”勝つためのレーシングバイク”を開発する上で重視している「速さ」にフォーカスしてインプレッションを交えて解説していきます。
まずはSPECIALIZEDの言う「速さ」とは、
「速さ=エアロx軽さxクオリティ」
速さを得るためにはただエアロなだけ、ただ軽いだけでは意味がない。
エアロでそして軽くて、長い距離の厳しいレースを走りぬく快適性や剛性といったクオリティの三つの要素が重要になってくる。
Super computer&Wind tuunel
今回のSL8の開発では、それぞれの観点で達成したい目標値をあらかじめ定めておき、それらを達成できる一番理にかなった形状をVRで作成。53回のプロセスを経て54回目でようやく今の形が出来上がった。中でも風洞実験施設でのテストでは自社に構えるWinTunnelといった自転車に特化した風洞実験施設を使い、通常の風洞実験施設では車や航空機の開発に使われるような超高速度域の実験に特化しているのに対し、スペシャライズドのWinTunnelは自転車レースに特化しており、空力が良い事に越したことはないのだろうが、重量増しになるような自転車の速度域からはみ出た度を越した空力はいらないというのが一つの答えなのだろう。
Flowbiz
開発に関する話を聞いて中でも面白いと感じたのが、フロービズと呼ばれる蛍光塗料の流れ方を見ることで気流を可視化するといったテスト方法で、空気の流れを可視化することで無駄をなくすという技法を風洞実験の他にも取り入れている。実際にF1のレースマシンの開発でも見られる技法で、TARAMC SL8の開発では前方から塗料を吹き付けることで空気に当たる部分と当たらない部分を見分けるといった方法をとっているそう。
もちろん、そうやってできたサンプルをプロのライダーが実際に乗ることでライダーの意見を尊重し、開発に役立たせている。幸運なことにスペシャライズドのライダーにはサムベネットやファビオヤコブセンといった世界でもトップレベルのスプリンターやジュリアンアラフィリップやレムコイヴェネプールといったオールラウンダーが在籍している。彼らからのフィードバックをもとに開発は進められる。そんな開発プロセスの中でSL8は具体的にどのような変化したのか
①エアロ
TARMAC SL7が発表される前に人気を集めていたエアロロードバイクのVENGE、圧倒的なエアロ性能でスプリンターが勝利を量産していた。そんなVENGEよりエアロ性能に優れている。40kmの距離を進むと16.6秒、距離にすると180m速くゴールできる。無論TARMAC SL7よりもエアロとなった。
TARMAC SL7のフレーム重量800gに対して、S-WORKS TARMAC SL8は15%軽い”685g”(カラー:RTP、サイズ:56)、完成車重量も実測で6.65kg(カラー:White、サイズ:52*ペダル抜き)と非常に軽い。
具体的には、フロービズで前方から実際に蛍光塗料を飛ばすことで気が付いた空力にほとんど関与しない部分のブラッシュアップ。まずBB周りはペダリング時に空気が乱れることがわかっているのでエアロ形状やボリュームを持たせることはやめた。そしてパイプ形状もAETHOSを彷彿させる丸みを帯びたものを使うことで剛性をしっかり確保して軽量化に成功した。シートステーやシートチューブのスリム化も軽量化に大きく影響している。
③クオリティ
①、②でご説明したようによりエアロにそして軽くなったSL8。ただ軽くてエアロなだけでは速さには繋がらないとSPECIALIZEDは言う。
ライドクオリティ、剛性や快適性もしっかりと考量しライバルのアタックにも追従できる剛性と、200kmを超えるタフなレースも走り切れる快適性を兼ね備えた。剛性面でいうと各部を軽量化しているにも関わらず、16%の剛性アップ(重量比では33%向上)を実現。特にBBとエンド、ヘッド周りの剛性を重視している。快適性(乗り心地)の面もシートポストを改良することでしなりが生まれ路面からの振動を吸収し、SL7より快適に仕上がっている。ジオメトリーに関しては、既に数多くのレースで活躍しているTARMAC SL7と同様でタイヤキャパシティも32cまでと同様となった。
インプレッション
・踏み込んだ瞬間の加速が桁違い
・スピードが上がってもどこまでも加速していく伸び
・スプリントでの反応も桁違い
・下り性能や、コーナリング性能も向上
TARMAC SL7ですら”やばいロードバイク”だったのにそれを優に超える”やばいロードバイク”になっていた。
まず驚いたのが漕ぎ出しの軽さ。インナーに入っているかと錯覚するほど漕ぎ出しが軽い。超軽量バイクのAETHOSに乗った時の印象にかなり近いものを感じました。
AETHOSと全く違うのがそこからペダルを踏んでいった時の加速感。ここはSL7の上位互換的な進みかたでとても気持ち良く加速します。スプリントに関しても踏んだら素直に推進力へと変換してくれるのでストレスなく思い切り踏めました。試乗車なので安全第一で走っていたが、自分の踏んでいる感覚より速い速度域で走っていたようで後でSTRAVAを見返して驚くことになりました。
登坂に関して、試乗した環境がとても良く1~3km程でそこそこ斜度のある登坂を何本か堪能させていただいたが、自分の7.5kgのTARMAC SL7 PROに絶望してしまいました。6kg台という軽さが登坂で武器になることはわかっていたつもりですが嫌というほど思い知らされました。シッティングでもダンシングでも面白いくらい良く進んでくれて、じわじわと踏んでも、スパッと加速しても気持ちよく反応してくれるので、レースではかなり強い味方になってくれること間違いありません。標高1,100mを超える高所での試乗で高所に慣れていない自分の肺と心臓が先に負けたことは言うまでもありません。
下り坂についてはスプリント時と同じ現象が起きました。試乗車なので安全第一で下っていたつもりが、後からSTRAVAを見返すととんでもない数字が出ていました。安定感と伸び、操作性が良い為凄く気持ちよくコーナリングができ、PRIDE CLX2が速いホイールだということは周知していますが、自分も普段RAPIDE CLを使っているのでリム自体の形状は同じ。ハンドルもRAPIDE COCKPITを使っているので、形状面で違うのはフレームのみなのですが、下りの伸びとコーナーの安定感に驚きました。
最後に、快適性について触れておくとハンドルへの突き上げは正直SL7と変わらないです。サドルへの突き上げについてはかなり違いを感じ、シートポストがしなってくれているのをある程度感じられるレベルで突き上げが軽減されています。昨今のシートポストのごついエアロ系レーシングバイクと比べても群を抜いて乗り心地が良いと感じました。
ポジションもサドル位置のみしか合わせていないにも関わらず、何も癖が無く
TARMAC SL7に普段乗っていることもあり、ここまでしっかり違いを感じられるとは正直考えていなかったが乗ってみたら全く違うバイクであることがわかりました。ジオメトリーが変わっていないので、TARMAC SL7からそのまま乗り換えできるのも嬉しいポイントです。
店頭には54サイズの試乗車を用意予定!
是非皆さんにもTARMAC SL8の”やばさ”を実感してみて欲しいです。
試乗車は常時店頭にあるわけではございません。
試乗の際はメールまたはお電話にてご予約の方を必ずお願いします。
また、店頭展示と販売開始は8月18日よりスタート!!
皆様のご来店お待ちしております。
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スペシャライズド自由が丘 剣持
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